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(警察も解説)公務員心理職の仕事・待遇・採用のポイントを解説します。

こんにちは。

 
このブログでは、心理学を活かして働くということをテーマに扱っています。今回は就職のうち、心理学を活かす!という意味で最もメジャーな公務員心理職について解説していきますね。

その前に心理学を活かした就職全般の話が聞きたい!という方はこちらの記事をどうぞ。


自分学部卒なんだけど、学部卒でも採用されるにはどうしたらいい?という悩みがある方はこの記事をどうぞ。

 

公務員心理職とは?

心理学(特に臨床心理学)の専門的なスキルを活かして働く公務員のこと。例えば心理判定員や児童福祉士、法務省専門職員(法務技官・法務教官・保護観察官)などいろいろあります。

 

例外はありますが、事務系の公務員と異なり現場(少年院や児童相談所)での勤務が多いのが特徴です。技術系と同じように「専門職」として採用されます。

待遇面では、非正規雇用が常態化しているカウンセラーに比べ、心理職の中で公務員心理職は非常に恵まれています。

 

高校生向けですが、それ以外の方にも参考になるところが多いはず。正直なところゾッとしました... 

国家公務員の場合

主に3つの選択肢があります。本省(霞が関)で働く国家公務員総合職(人間科学)と法務省専門職員,裁判所職員総合職(家庭裁判所調査官)があります。


国家公務員総合職や家裁調査官、法務省専門職については毎年採用が行われており、大学時代の専攻は一切不問です。また公認心理師や臨床心理士の資格を持っていなくとも受験できます。 

 

国家公務員総合職(人間科学)

国総などと略されます。いわゆる官僚にあたる人のことです。

 

心理学・教育学・社会学・社会福祉学などの専門的なスキルを活かして、主に政策立案や他の職員のマネジメントを行う職員です。少年院や鑑別所と本省を行ったり来たりする法務省のような例外もありますが、基本的には現場を離れた事務職です。

採用試験についてみていきましょう。院卒・大卒で明確に試験区分が分かれており、近年は採用者の6割程度が院卒
になっています。

大卒と院卒で内定先の省庁に差があるのが実情です。大卒の場合はほぼ法務省のみ。院卒の場合は採用者が多い省から法務省・厚生労働省・文部科学省となっています。これ以外の省庁は毎年0~1名ですが、会計検査院で採用された人もいます。

 

心理学専攻の人は、心理学のみで受験できるため院試との両立がしやすいのも大きなメリットです。しかも,国家公務員総合職の合格者名簿には3年間掲載されるため,学部4年生の時に公務員試験に合格し、大学院修士2年の時に官庁訪問することも可能ですし、私自身もこの方法で採用された方を直接見たことがあります。

 

裁判所職員総合職(家庭裁判所調査官)

裁判所の職員として主に家裁調査官の仕事をします。すでに犯罪を犯した少年のもとに行き、なぜその少年が犯罪をしてしまったのか?といったことを調べたり、離婚などの家庭内トラブルがあったとき、子供の親権を父母のどちらに与えるのか?といったことを調査するのが主な仕事です。

心理的知見を活かした仕事ではありますが、裁判所の総合職であるためいわゆる事務職になることもあります。

職員の方の話では,めちゃくちゃ転勤が多く、しかも総合職扱いなので転勤の範囲は全国のようです。なお採用後2年間は埼玉県で研修が行われるほか、その後も数回にわたって埼玉県の研修所で長期研修があります。

令和2年度(2020年実施)の試験から試験制度が大幅に変更されました。詳細は公式サイトを確認いただきたいのですが,
  • 1次試験が教養試験のみになった
  • 2次試験で今までは不可能だった組み合わせを含め,全ての組み合わせで受験可能に

このことによって,今までは不可能だった「法律科目だけ(人間科学系の科目ナシ)での受験」が可能になりました。

 

法務省専門職員

主に現場(少年鑑別所・少年院)で働く職員です。法務技官、法務教官の場合は実際に少年の心理状態を検査したり、少年の矯正を行います。一方で保護観察官は刑期を終えた成人の社会復帰を支援する仕事です。

 

 注意

採用パンフレットにはあまり書かれていませんが、法務技官・法務教官のいずれも刑務所のような成人向けの施設での勤務もあります。


国家公務員総合職と異なり本省で働くことはほとんどなく、地方の矯正管区や少年院等で働きます。なお管区内における引っ越しを伴う転勤があります。

 

保護観察官を除き警察官などと同じ公安職扱いになっており,一般職の公務員に比べて給料は10%程度高いです*1。また夜勤があるため実際にもらえる給料は募集要項よりもかなり多くなります。

ちなみに私は学生時代に少年院のインターンに参加したことがあります。その時の感想をこちらの記事に残しておきました。実際の仕事も面白さや大変さが分かるはずです。

  

地方公務員

自治体ごとに実際の仕事の内容が異なります。基本的には現場(児童相談所とか)でのカウンセリングや児童の指導、障害者福祉に関する業務を現場で行うケースが多いです。ただし、自治体によっては福祉政策の立案業務に携わることもあります。

つまり、民間のカウンセラーと異なり現場を離れる可能性が結構高いです。

市・県職員の場合

障害を持った子供/成人に対する心理判定や、虐待などを受けて児童相談所に連れてこられた子供の心理検査を行ったりするのが主な仕事です。自治体によって、就労支援のような福祉職に近い仕事をすることもあります。

 注意

児相勤務を希望する場合、原則として都道府県か政令市に就職する必要があります*2


日勤のみの施設が多く、特に障害者向けの施設は日勤のみです。しかし実際に子供と寝食を共にするタイプの施設では、夜勤があったりすることもあります。そして配属先は採用されるまでわかりません。特に都道府県職員で採用された場合、引っ越しを伴う転勤があります。

 

採用試験について

東京都や大阪府などの大規模自治体では毎年採用しており、10名以上の大量採用を行うケースもあります。しかし、それ以外の自治体では採用0の年も珍しくありません。

 注意

公務員試験の日程上、政令市と都道府県*3は基本的に併願できません。そのため、出願の段階でどちらの自治体を狙うかきちんと決める必要があります。

国家公務員総合職と異なり大卒・院卒で試験区分が分かれていません。しかし、大学時代の専攻が心理学であることが必須の自治体がほとんどで、一部の自治体では新卒にも公認心理師か臨床心理士の資格を求めるケースも。

そんなこともあってか合格者の過半数は院卒者になっており、学部卒がほとんど合格できない状況になっています。

筆記試験の問題も自治体によって大きく異なります。国家公務員の試験では心理学だけで受験できるような職種でも、地方だと社会福祉の問題も解かないといけない...という自治体も。

警察の場合は?

一部の都道府県では、心理学の専門性を活かして少年や警察官に対するカウンセリングを行ったり、学校との連携を実施する職員を採用しています。

例えば大阪府の場合はこんな感じ。


あくまでも警察官ではなく警察職員なので、夜勤等は原則ありません。また国家公務員と異なり基本的には転勤リスクも小さめ。ただし、採用時に警察学校での研修があることに注意が必要です。

心理学専攻であれば応募できるケースもありますが、自治体によっては公認心理師の資格を既に持っていることを要求するケースも。

なお、これは県や市の心理職とは別の扱いとなっており、人事システムも異なっています。また、大阪府のような大規模な県警でも採用者は年1~3名程度と採用者も少なめです。

研究職

警察(警察庁であれば科警研/都道府県警察であれば科捜研)で捜査方法の研究を行ったり、自衛隊職員として心理学的研究を行います。

テーマはあまりオープンになっていませんが、警察ではウソ発見器の研究をしたり、自衛隊では潜水時の心理状況の研究をしている話を聞いたことがあります。犯罪捜査法の改善といった業務だけではなく、普通の研究者同様に学会発表や論文執筆も行います。

採用の母体が警察/自衛隊であり、採用試験はいわゆる警察官や自衛官とは全く別の内容です。いずれも心理学に関する大学レベルの知識が求められています。

採用されたら退職時まで研究職として働くことになります。また警察官として交番に勤務したりすることはありません。

採用は原則若干名であり国家公務員総合職(人間科学区分)から採用される科警研は2~3年に1名程度の採用です。科捜研も各都道府県ごとに1~2年に1名程度の採用とかなり少なくなっています。 

 

まとめ

公務員心理職とひとくちにいっても,事務系・公安系・研究系と非常に幅広いのが実情。転勤の有無の各求人に依存しています。とはいえ「心理学を生かしつつ任期なしで働ける*4」魅力はとても大きいもの。

少しでも参考になれば幸いです。

*1:それだけ危険な仕事でもあるということなんですが...

*2:政令市以外で児相を設置しているのは横須賀市・明石市・金沢市の3市のみです

*3:東京都を除く

*4:任期付き公務員の場合もありますが...